初登場
実は、始末が彼の華々しいデビューではなかったようだ。
目の利く人は既にチェックして、延々と伏線を辿っていたらしい。魍魎。
名前だけの登場の癖して、かなり怪しい。胡散臭い。
そして東南亜細亜の匂いがぷんぷんする、場末の中華料理屋みたいな男である。>>『魍魎の匣』p603
中禅寺『司君に聞いた』
何を聞いたのかとゆーと、ゴリラの値段だったりする。
ここでシリーズ始まって以来、初めて明らかになった司事実が、合わせて四つ。
一つ、フルネームは司喜久男である。
一つ、輸入雑貨を商売にしているらしい。
一つ、何故か極東の暗黒街に顔がきく。
一つ、猿の値段を知っている。
でもこれには致命的な欠点があった。
こんなに詳しい事実が判明していながら、肝心なとこは煙にまかれているのだ。フルネームが司喜久男。
まあこれはいい。別にいい。名字が1文字で、名前に三文字も食っているとこが少しひっかかるけれどかまわない。輸入雑貨。それって要するに何なのだ。
雑貨とゆーと、何か反射的にちまちましたファンシーな文房具とかを想像してしまうけれど、そーゆうのとは違うんだろうな、やっぱ。
輸入雑貨。そもそも雑貨って何だろう。雑貨【ざっか】名詞。種種の、こまごまとした日用品。(岩波国語辞典)
なんだかわかったようなわからないような。
辞書を引いたのにわからないとは、いよいよもってただ者ではない。
日用品というと、歯ブラシとか湯呑みの類か。けっこうケチな商売なのかもしれない。
どうなんだ、キクちゃん。『へへへ。そう云うふうに改まって尋かれるとヤだなぁ。』
次。極東の暗黒街。って要するに、何なんだ。
それこそまさに蛇の道は蛇で、どんなことをするのかさっぱりわからない。
香港マフィアみたいな奴だろうか。
あれよりはレベルが低いんだろうか。
やっぱりヤクさばいてディーラーらりってマグナム抱えたりするんだろうか。
指輪で指がちぎれそうに太ったボスが、ネオンの輝く夜景を高層ビルの最上階から見下ろしつつ、「殺れ」と洩らせば命が散っちゃう、
そんな世界のことなんだろうか。そんな人達と知り合いでホントに大丈夫なのか、キクちゃん。
そして最後に猿の値段。
猿の値段って、要するに関君の値段か。
人も売るのか。
それってホントに犯罪じゃないの、キクちゃん。『まあどうでもいい事だけどさ。』
最後になったけど、最初に明らかになったキクちゃんの人間関係が、よりによって中禅寺さんとのそれだった。
ってことが何だか意外だった。それだけの魍魎。
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